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ミッション
#001
「時そば」のメニューを探せ!
#002
「なめくじ長屋」を探せ!
#003
人力車を引いて「反対俥」の稽古!
#004
電車で巡る 落語スポット!
#005
高尾山で天狗探し!
#006
落語の心霊スポットめぐり!
#007
「茶の湯」を再現!飲めるか?
#008
「ねぎま鍋」を再現!美味いのか?
#009
江戸時代の撮影セット村を探索!
#010
「妾馬」の謎を追え!
#011
江戸時代の罪と罰条を調査

#001 「時そば」のメニューを探せ! (その3)


さて、レポートのまとめ

まず、「花巻」についてであるが、『蕎麦の事典』(新島茂著)によれば、「花巻はかけそばに焼き海苔をのせ、薬味はおろし山葵(わさび)で、ねぎはつけない。海苔の香りとそばの味を楽しんだもの」だとある。
焼き海苔を載せるというスタイルと、薬味のおろし山葵、という点で、今回我々がたどり着いたもので間違いなかろう。
ねぎを付けるかどうかはそれぞれの店の判断で許容できる範囲かと思う。

江戸時代のそば屋が担いで店をやっていたことを考えると、焼き海苔というのは軽くて理にかなった具材だったような気がする。「海苔の香りとそばの味」というのも、江戸っ子が好みそうな粋な感じがする。
「花巻」という語源は、材料の浅草海苔が「磯の花」に例えられていたことからきているそうだ。
店によってはこれが、もみ海苔だったり、以前の「尾張屋」の写真では全面を覆い尽くすように全ての海苔を丼の中に入れていたようだが、見た目からすれば、今の「尾張屋」のように海苔は花びら状に並べてもらった方がその名に近い気がする。



一方、「しっぽく」については、情報が様々でやや判断が難しいところもあるが、「卓袱」という言葉をたどって、長崎を起源とする「卓袱料理」から転じて、蕎麦やうどんの上に椎茸、蒲鉾、湯葉、海苔、野菜などをおいたもの、というのが文字での説明となる。
前出の『蕎麦の事典』によると「この卓袱料理の中に、大盛りに盛られたうどんの上にいろいろな菜肉がのせられたものがあり、これをいち早くまねて、大平椀に盛ったものが『しっぽくそば』で寛延年間(1748〜1750)に江戸で売り出された本に、日本橋人形町に新しい店が出来、しっぽくそばが提供されたと出ているが、卓袱の長崎から江戸への動きから見てみると、やはり京阪の麺屋が先に始めたと考えられる」と出ている。
長崎を起点に関西を経て江戸に伝わり、「しっぽくうどん」から「しっぽくそば」へとなったのだろう。

そば、うどんの上にいろいろな具がのせられているのが「しっぽくそば(うどん)」ということが明らかになったが、その認知度は今となっては非常に低く、一方で、非常に形が似たものとして、「おかめそば」というものが存在する。
ここで、「しっぽくそば」と「おかめそば」との違いについて考えておきたい。
多くの具が載っていることや、その中に蒲鉾、玉子焼きが含まれていることは両者に共通している。
ただ、「おかめそば」は「幕末の頃、江戸・下谷七軒町にあったそば店「太田庵」が考案した種もの。
名前の由来は、具の並べ方がおかめの面を連想させるところからきている」と具体的でかつ比較的新しく、その出生が明らかに残っている。
こうして見ると、少なくとも「しっぽく」の方が100年余り古い。
この「太田庵」がおかめそば考案にあたって、しっぽくを元にしたのかどうかは分からない(「しっぽくそば」が「おかめそば」の原型となったする説もある)。

それならば、せっかくなんで、「しっぽくそば」と「おかめそば」を並べて見れば違いが明らかになるだろうし、両方を食べ比べてみれば、さらに違いが分かるかもしれないと思い、再度「利久」を訪れることにした。
というのは、本調査レポート執筆のために写真データを整理していたところ、「利久」の品書きに、前回の調査当日には気がつかなかったものの、「しっぽく」とは別に「おかめ(そば)」という品名が記載されていたからである。

このように区別して書くからには、何らかの違いがあるのではと思い、再び「利久」の暖簾をくぐることになった。


「再調査」編へ続く・・・・・>(次で完結)