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ミッション
#001
「時そば」のメニューを探せ!
#002
「なめくじ長屋」を探せ!
#003
人力車を引いて「反対俥」の稽古!
#004
電車で巡る 落語スポット!
#005
高尾山で天狗探し!
#006
落語の心霊スポットめぐり!
#007
「茶の湯」を再現!飲めるか?
#008
「ねぎま鍋」を再現!美味いのか?
#009
江戸時代の撮影セット村を探索!
#010
「妾馬」の謎を追え!
#011
江戸時代の罪と罰条を調査

#001 「時そば」のメニューを探せ! (その4)


「しっぽくそば」と「おかめそば」は別物だった

再調査で「利久」を訪れ、早速「おかめそば」と「しっぽくそば」を注文した。
「どちらを先にお持ちしますか?」と聞かれたので、「一緒にお願いします」と答えた。

先に「おかめそば」が届き、すぐに「しっぽくそば」も届いた。

「おかめそば」は具材の8割が「しっぽくそば」と共通で、具の沢山入ったそばであることは間違いなかったが、両者には大きな違いがあった。出汁である。「おかめそば」は普通の関東風のそばの濃い出汁である。
一方、「しっぽくそば」は既報の通り、薄口の出汁であった。 「おかめそば」は具材を使って、おかめの顔を表現している。(そうはなかなか見えないけど)

ちなみに具材の比較をすると次のようになる。
しっぽくそばかまぼこ(小)、玉子焼き、椎茸、鶏肉、ゆずの皮、豆(過日は、三つ葉だった)
おかめそばかまぼこ(大)、玉子焼き、椎茸、なると、筍、麸、ゆずの皮、豆

両方の丼を並べて写真を撮ってから、食べてみた。
(左が「しっぽく」で、右が「おかめ」)

まずは「おかめそば」から箸をつけた。何故なら、しっぽくは前回食べているから。
特に味の面で特筆すべきことはなく、普通の関東のそばに豪華な具材が入ったもの。
続いて、「しっぽくそば」を口にしたが、この順番が失敗だった。
濃い味の後に、薄味のものを食べたため、味が負けてしまっている。

何とか2杯のそばを平らげ、出汁の色が分かりやすくなった状態で再度撮影。

(左が「しっぽく」で、右が「おかめ」)

「通し言葉」に謎を解く鍵が!
通し言葉とは受けた注文を厨房に伝えるときの言葉で、一部符丁が含まれていたりする。
「おかめそばとしっぽくそば」という注文に対し、女性店員は「おかめ、だいがわりでしっぽく」と厨房に伝えた。
この時点では分からなかったが、「だいがわり」とは「台替わり」と記載し、本来うどんをベースにしたメニューに対し、そばの注文があった場合や、逆に、そばをベースにしたメニューに対し、うどんの注文があった場合に、メニューの頭に付ける言葉であることが分かった。
よって、この通し言葉から、「しっぽく」はそばではなく、「うどん」がメインのメニューであることが分かった。
しっぽくが関西を経て江戸に伝わったことの名残でもあろう。薄口であることにも納得がいく。

「しっぽく」が薄口の出汁だとすると、「時そば」のストーリーに矛盾が生じる。
一人目の客は「出汁がきいてるね」、「鰹節おごったね」と出汁を褒める。
そして、翌日の二人目の客は、出てきたそばの出汁が濃すぎて、お湯で薄めてくれと言う。
これらは濃口の出汁を前提としていなければ成り立たない。
また、16文という値段は、かけそばでの値段であって、種ものは別料金となっていたようだ。
竹輪が入っていたのは、サービスと言ったところか?。
さらに、「時そば」は上方での「時うどん」が伝わったものとされているが、「時うどん」ではメニューの話は出てこず、「一杯どうですか?」という展開となっている。

原型は「かけそば」だったのでは?!
以上の検証により、「時そば」のそばが「しっぽく」では成り立たず、そもそもは「かけそば」だったものが、いつかのタイミングで、誰かが「できますのは、花巻にしっぽく」というセリフを足したのではないかと、思われる。
ただそれが、いつのことなのか、誰によるものなのか、そこまでは分からない。

■今回の調査のまとめ

・「花巻」は浅草海苔の入ったそばである
・「しっぽくそば」は具沢山の薄口出汁のそばである
・「時そば」の原型は「かけそば」だったと推測される



以上により、今回のミッション完了!!

来るべき「調査報告会=落語会」では、時松団員が「時そば」を口演する予定です。
「しっぽく」でやるのかな??