#001 「時そば」のメニューを探せ! (その4)
「しっぽくそば」と「おかめそば」は別物だった | |||||
再調査で「利久」を訪れ、早速「おかめそば」と「しっぽくそば」を注文した。 「どちらを先にお持ちしますか?」と聞かれたので、「一緒にお願いします」と答えた。 先に「おかめそば」が届き、すぐに「しっぽくそば」も届いた。 「おかめそば」は具材の8割が「しっぽくそば」と共通で、具の沢山入ったそばであることは間違いなかったが、両者には大きな違いがあった。出汁である。「おかめそば」は普通の関東風のそばの濃い出汁である。 一方、「しっぽくそば」は既報の通り、薄口の出汁であった。 「おかめそば」は具材を使って、おかめの顔を表現している。(そうはなかなか見えないけど) ちなみに具材の比較をすると次のようになる。
両方の丼を並べて写真を撮ってから、食べてみた。 (左が「しっぽく」で、右が「おかめ」) まずは「おかめそば」から箸をつけた。何故なら、しっぽくは前回食べているから。 特に味の面で特筆すべきことはなく、普通の関東のそばに豪華な具材が入ったもの。 続いて、「しっぽくそば」を口にしたが、この順番が失敗だった。 濃い味の後に、薄味のものを食べたため、味が負けてしまっている。 何とか2杯のそばを平らげ、出汁の色が分かりやすくなった状態で再度撮影。 (左が「しっぽく」で、右が「おかめ」) | |||||
「通し言葉」に謎を解く鍵が! | |||||
通し言葉とは受けた注文を厨房に伝えるときの言葉で、一部符丁が含まれていたりする。 「おかめそばとしっぽくそば」という注文に対し、女性店員は「おかめ、だいがわりでしっぽく」と厨房に伝えた。 この時点では分からなかったが、「だいがわり」とは「台替わり」と記載し、本来うどんをベースにしたメニューに対し、そばの注文があった場合や、逆に、そばをベースにしたメニューに対し、うどんの注文があった場合に、メニューの頭に付ける言葉であることが分かった。 よって、この通し言葉から、「しっぽく」はそばではなく、「うどん」がメインのメニューであることが分かった。 しっぽくが関西を経て江戸に伝わったことの名残でもあろう。薄口であることにも納得がいく。 「しっぽく」が薄口の出汁だとすると、「時そば」のストーリーに矛盾が生じる。 一人目の客は「出汁がきいてるね」、「鰹節おごったね」と出汁を褒める。 そして、翌日の二人目の客は、出てきたそばの出汁が濃すぎて、お湯で薄めてくれと言う。 これらは濃口の出汁を前提としていなければ成り立たない。 また、16文という値段は、かけそばでの値段であって、種ものは別料金となっていたようだ。 竹輪が入っていたのは、サービスと言ったところか?。 さらに、「時そば」は上方での「時うどん」が伝わったものとされているが、「時うどん」ではメニューの話は出てこず、「一杯どうですか?」という展開となっている。 | |||||
原型は「かけそば」だったのでは?! | |||||
以上の検証により、「時そば」のそばが「しっぽく」では成り立たず、そもそもは「かけそば」だったものが、いつかのタイミングで、誰かが「できますのは、花巻にしっぽく」というセリフを足したのではないかと、思われる。 ただそれが、いつのことなのか、誰によるものなのか、そこまでは分からない。
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以上により、今回のミッション完了!! 来るべき「調査報告会=落語会」では、時松団員が「時そば」を口演する予定です。 「しっぽく」でやるのかな??
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